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行方不明の相続人がいる場合はどうすればいい?
不在者財産管理人について解説

行方不明の相続人がいる場合はどうすればいい?不在者財産管理人について解説

冒頭

こんにちは。【札幌相続遺言プラザ】ふくちたつや司法書士・行政書士事務所の福池達也です。

 

ご家族やご親族が亡くなり、相続の手続きを進めようとしたとき、相続人の一人と連絡が取れない、あるいはどこにいるのか全く分からないという事態に直面することがあります。このような「行方不明の相続人がいる場合」、遺産分割協議をはじめとする相続手続きは、原則として進めることができません。

「どうすれば遺産を分けられるのだろう?」「いつになったら手続きが終わるのだろう?」そんな不安や疑問を抱えている方も多いのではないでしょうか。

本記事では、行方不明の相続人がいる場合に、なぜ相続手続きが難しくなるのか、そしてその具体的な解決策の一つである「不在者財産管理人」制度について、目的、手続きの流れ、費用、注意点などを詳しく解説します。

行方不明の相続人がいる場合、なぜ遺産分割が進まない?

行方不明の相続人がいる場合、なぜ遺産分割が進まない?

相続人のうち一人でも行方不明であると、相続手続きの出発点である遺産分割協議が成立せず、結果として相続全体が停滞してしまいます。

相続人が行方不明である場合に起こるおもな問題は以下のとおりです。

  • 相続において「相続人全員の合意」はきわめて重要
  • 遺産分割協議ができない事態とは?
  • 期限のある手続きを放置した場合のデメリット
  • 行方不明者の捜索方法について

ここでは、相続における全員合意の必要性と、それが得られない場合に生じる問題点を整理します。

相続において「相続人全員の合意」はきわめて重要

遺産相続の基本的なルールとして、亡くなった方(被相続人)の財産をどのように分けるかを話し合う「遺産分割協議」は、相続人全員の参加と合意がなければ有効に成立しません。これは、民法で定められている非常に重要な原則です。

一人でも欠けた状態で行われた遺産分割協議は無効となり、後日、行方不明だった相続人が現れた場合にトラブルが生じる可能性があります。

金融機関での預貯金の解約や、不動産の名義変更(相続登記)なども、原則として相続人全員の同意を示す書類(遺産分割協議書や同意書など)が必要となるため、行方不明者がいるとこれらの手続きがストップしてしまいます。

遺産分割協議ができない事態とは?

行方不明の相続人がいるために遺産分割協議ができないと、具体的に以下のような困った事態が発生します。

  • 預貯金の解約・払い戻しができない
    金融機関は、相続人全員の同意がなければ、被相続人の口座から預貯金を引き出すことを認めません。
  • 不動産の名義変更(相続登記)ができない
    法務局は、相続人全員が合意した遺産分割協議書などがなければ、不動産の相続登記を受け付けてくれません。これにより、不動産を売却したり、担保に入れたりすることもできなくなります。
  • 株式や投資信託などの名義変更・換金ができない
    証券会社なども同様に、相続人全員の同意を求めます。
  • 相続財産を処分できない
    例えば、空き家になっている実家を解体・売却したいと考えても、行方不明の相続人の同意が得られないため進められません。

このように、相続財産を活用したり処分したりすることができず、管理費用だけがかさむといった状況に陥ることもあります。

期限のある手続きを放置した場合のデメリット

相続手続きの中には、期限が設けられているものもあります。代表的なものが「相続税の申告・納付」で、これは相続開始を知った日の翌日から10ヶ月以内に行う必要があります。

行方不明の相続人がいるために遺産分割協議がまとまらなくても、相続税の申告期限は待ってくれません。期限内に申告・納付ができない場合、延滞税や加算税といったペナルティが課される可能性もあります。

また、長期間放置することで、他の相続人の状況が変わったり(例えば、他の相続人が亡くなってさらに相続関係が複雑になるなど)、証拠書類が散逸したりするリスクも高まります。

参照:No.4105 相続税の申告と納税|国税庁

参照:No.9205 延滞税について|国税庁

行方不明者の捜索方法について

行方不明の相続人がいる場合、優先すべきなのは当人を探し出すことです。戸籍謄本や戸籍の附票を辿って現住所を調査したり、共通の知人に連絡を取ったりする方法があります。

しかし、長年音信不通であったり、意図的に連絡を絶っているような場合には、自力での捜索には限界があります。司法書士などの専門家に依頼して、職権で戸籍や住民票を調査してもらう方法もありますが、それでも見つからないケースは少なくありません。

このような場合に、法的な手続きによって事態を打開する方法の一つが、次にご紹介する「不在者財産管理人」制度です。

参照:住民基本台帳法第十二条|e-Gov法令検索

参照:民法907条|e-Gov法令検索

参照:登記申請手続のご案内(相続登記①/遺産分割協議編)|法務局

参照:No.4105 相続税がかかる財産|国税庁

不在者財産管理人とは?
行方不明の相続人がいる場合の強力な解決策

不在者財産管理人とは?行方不明の相続人がいる場合の強力な解決策

行方不明の相続人がいることで遺産分割が進まない場合、不在者財産管理人を選任することで法的に協議を進められる可能性があります。

以下は不在者財産管理人制度の概要です。

  • 不在者財産管理人制度の目的と役割
  • 不在者財産管理人はどんな時に選任できる?
  • 不在者財産管理人を選任するデメリットと注意点
  • 不在者財産管理人と失踪宣告、どちらを選ぶべき?

ここでは、不在者財産管理人制度について解説します。

不在者財産管理人制度の目的と役割

不在者財産管理人制度とは、従来の住所や居所を去り、容易に戻る見込みのない人(不在者)の財産を管理・保全するために、家庭裁判所が選任する代理人のことです。

行方不明の相続人がいる場合、この制度を利用することで、その不在者に代わって財産管理を行ったり、遺産分割協議に参加したりする権限を不在者財産管理人に与えることができます。

おもな目的と役割は以下の通りです。

  • 不在者の財産の保全
    不在者の財産が散逸したり、価値が下がったりしないように管理します。
  • 遺産分割協議への参加
    不在者に代わって他の相続人と遺産分割協議を行い、合意に至れば遺産分割協議書に署名・捺印します。これにより、止まっていた遺産分割を進めることができます。
  • 必要な法律行為
    不在者のために、訴訟行為や財産の処分など、家庭裁判所の許可を得て必要な法律行為を行います。

つまり、行方不明の相続人がいても、不在者財産管理人を選任することで、法的に相続手続きを進めることが可能になります。

参照:民法第25条|e-Gov法令検索

参照:民法第28条|e−Gov法令検索

参照:不在者財産管理人選任|裁判所

不在者財産管理人はどんな時に選任できる?

不在者財産管理人を選任できるのは、おもに以下のような条件を満たす場合です。

  • 不在者がいること
    従来の住所または居所を去り、容易に戻る見込みがない状態であること。単に連絡が取りにくいというだけでは足りず、生存しているか死亡しているかも不明な場合などが該当します。
  • 管理すべき財産があること
    不在者自身が何らかの財産(不動産、預貯金、株式など)を所有しているか、または相続財産の中に不在者の相続分が含まれていること。
  • 利害関係人または検察官からの申立てがあること
    利害関係人とは、例えば他の共同相続人、不在者の債権者、不在者から財産を管理するよう頼まれていた人などが該当します。

これらの条件を満たしていれば、家庭裁判所に選任の申立てを行うことができます。

参照:民法第28条|e−Gov法令検索

参照:不在者財産管理人選任|裁判所

不在者財産管理人を選任するデメリットと注意点

不在者財産管理人制度は有効な解決策ですが、いくつかのデメリットや注意点も存在します。

  • 費用がかかる
    • 申立て費用
      家庭裁判所への申立てには、収入印紙や郵便切手代が必要です。
    • 予納金
      不在者財産管理人の報酬や経費に充てるため、家庭裁判所に予納金を納める必要がある場合があります。

      この予納金は数十万円から100万円以上になることもあり、事案によって異なります。不在者にめぼしい財産がない場合は、申立人が負担することが多くなります。
    • 専門家費用
      司法書士などに申立て手続きを依頼する場合、別途依頼費用がかかります。
  • 時間がかかる
    申立てから不在者財産管理人が選任されるまで、通常数ヶ月から半年程度、事案によってはそれ以上かかることもあります。
  • 管理人の権限の限界
    不在者財産管理人は、家庭裁判所の監督のもとで職務を行います。遺産分割協議の内容が不在者にとって著しく不利なものであったり、財産を不当に安く処分しようとしたりする場合、家庭裁判所は許可を与えません。
    必ずしも申立人の思い通りに手続きが進むわけではないことを理解しておく必要があります。
  • 必ずしも捜索が主目的ではない
    不在者財産管理人のおもな役割は財産管理と遺産分割への参加であり、行方不明者を積極的に捜索することが主たる業務ではありません。

これらの点を考慮し、本当に不在者財産管理人の選任が最適な手段なのかを検討する必要があります。

参照:不在者財産管理人選任|裁判所

不在者財産管理人と失踪宣告、どちらを選ぶべき?

行方不明の相続人がいる場合のもう一つの法的手続きとして「失踪宣告」があります。これは、一定期間生死不明の状態が続いている人について、法律上死亡したものとみなす制度です。

不在者財産管理人

  • 生存を前提として財産を管理・保全する。
  • 遺産分割協議に参加できる。
  • 本人が現れた場合は、管理権限が終了し財産は本人に戻る。

失踪宣告

  • 法律上死亡したとみなされるため、その人についての相続が開始する。
  • 行方不明の相続人が「被相続人」となる。
  • もし生きて戻ってきた場合、失踪宣告の取消しなど複雑な手続きが必要になることがある。

どちらの制度を選択すべきかは、状況によって異なります。

  • 比較的短期間の行方不明で、生存の可能性が高いと考えられる場合や、本人が戻ってくることを期待している場合は、不在者財産管理人の選任が適していることが多いでしょう。
  • 長期間(通常7年以上)生死不明で、死亡している可能性が高いと考えられる場合や、相続関係を確定的に整理したい場合は、失踪宣告が検討されます。

専門家と相談し、どちらの手続きがご自身の状況にとってより適切かを見極めることが重要です。

参照:民法第25条|e-Gov法令検索

参照:民法第30条|e-Gov法令検索

参照:不在者財産管理人選任|裁判所

参照:失踪宣告|裁判所

 

不在者財産管理人の選任申立て手続きについて

不在者財産管理人を選任するためには、家庭裁判所への申立てが必要です。

申立てに関するおもな情報は以下のとおりです。

  • 家庭裁判所への申立てに必要な書類と収集方法
  • 申立て手続きの具体的なステップと注意点
  • 選任にかかる期間と費用の目安
  • 自分で申立てできるのか?専門家に依頼するメリット

ここでは、申立てに関する手続きについて解説します。

家庭裁判所への申立てに必要な書類と収集方法

申立てに必要なおもな書類は以下の通りですが、事案によって追加の書類が必要になる場合もありますので、事前に管轄の家庭裁判所に確認することをおすすめします。

  1. 家事審判申立書
    家庭裁判所のウェブサイトで書式を入手できる場合があります。
  2. 申立人の戸籍謄本、住民票
  3. 不在者の戸籍謄本、戸籍の附票、住民票(または住民票除票)
    不在の事実や最後の住所地を証明します。
  4. 不在の事実を証する資料
    • 捜索願受理証明書(警察に届け出ている場合)
    • 親族や知人からの聴取書(行方不明の経緯や状況を記載)
    • 不在者宛ての郵便物が返送された封筒など
  5. 財産目録およびその資料
    • 不在者が所有する不動産の登記事項証明書、固定資産評価証明書
    • 預貯金通帳のコピー、残高証明書
    • 株式の残高証明書など
    • 遺産分割の対象となる場合は、被相続人の財産目録も必要です。
  6. 不在者財産管理人の候補者がいる場合は、その候補者の住民票、身分証明書、事情説明書など

これらの書類は、市区町村役場、法務局、金融機関などから収集します。戸籍謄本などは、本籍地が遠方の場合は郵送で取り寄せることも可能です。

参照:不在者財産管理人選任|裁判所

申立て手続きの具体的なステップと注意点

不在者財産管理人選任の申立てから選任までの大まかな流れは以下の通りです。

  1. 必要書類の収集・作成
    上記の書類を準備します。申立書には、申立ての理由や不在者の状況などを具体的に記載する必要があります。
  2. 家庭裁判所への申立て
    不在者の従来の住所地または居所地を管轄する家庭裁判所に、申立書と添付書類を提出します。
  3. 家庭裁判所による審理・調査
    申立人や関係者(他の相続人など)との面談(審問)が行われることがあります。
    家庭裁判所調査官による調査が行われることもあります。不在の状況や財産状況について詳しく確認されます。
    場合によっては、不在者の親族に対して、不在者財産管理人の候補者として適当な人がいないか照会されることもあります。
  4. 不在者財産管理人の選任審判
    審理の結果、不在者財産管理人の選任が必要と認められれば、家庭裁判所が選任の審判を下します。
    この際、申立人が推薦した候補者が必ず選任されるとは限りません。家庭裁判所が適任と判断した司法書士などが選任されることもあります。
  5. 官報公告
    選任された場合、その旨が官報に掲載されることがあります。

注意点

  • 申立書の記載内容や添付書類に不備があると、手続きが遅れたり、追加の資料提出を求められたりすることがあります。
  • 家庭裁判所からの照会や呼び出しには誠実に対応する必要があります。
  • 予納金の納付が必要な場合は、期限内に納めなければなりません。

選任にかかる期間と費用の目安

期間

申立てから不在者財産管理人が選任されるまでの期間は、事案の複雑さや家庭裁判所の混み具合にもよりますが、一般的に3ヶ月から6ヶ月程度かかることが多いです。場合によっては1年以上かかることもあります。

費用

  • 申立て手数料
    収入印紙800円分
  • 連絡用の郵便切手
    数千円程度(家庭裁判所によって異なります)
  • 官報公告料
    必要な場合、4,000円~5,000円程度
  • 予納金
    これが最も大きな費用となる可能性があります。不在者財産管理人の報酬や管理費用に充てられるもので、数十万円から100万円以上になることもあります。不在者に財産がほとんどない場合は、申立人がこの予納金を負担することになります。
  • 専門家への依頼費用
    司法書士などに申立て手続きを依頼する場合、相談料、着手金、成功報酬などが別途かかります。事務所によって料金体系は異なりますが、一般的には20万円~50万円程度が目安となるでしょう(予納金とは別です)。

費用については、事前に専門家や家庭裁判所によく確認することが大切です。

参照:不在者財産管理人選任|裁判所

自分で申立てできるのか?専門家に依頼するメリット

不在者財産管理人の選任申立ては、ご自身で行うことも不可能ではありません。しかし、必要書類の収集や申立書の作成は煩雑で、法律的な知識も一定程度求められます。

専門家(おもに司法書士など)に依頼するメリットは以下の通りです。

  • 正確かつ迅速な手続き
    専門家は手続きに精通しているため、書類の不備なくスムーズに申立てを進めることが期待できます。
  • 手間と時間の削減
    煩雑な書類作成や裁判所とのやり取りを任せられるため、ご自身の負担を大幅に軽減できます。
  • 適切なアドバイス
    申立ての可否や、他の選択肢(失踪宣告など)との比較検討など、状況に応じた適切なアドバイスを受けられます。
  • 精神的な安心感
    専門家がサポートしてくれることで、不安を抱えながら手続きを進めるストレスを軽減できます。

費用はかかりますが、時間的・精神的な負担や、手続きの確実性を考慮すると、専門家への依頼は有効な選択肢と言えるでしょう。

参照:不在者財産管理人選任の申立書|裁判所

参照:家事事件手続法別表第一(五十五)|e-Gov法令検索

誰が不在者財産管理人になれる?

誰が不在者財産管理人になれる?

家庭裁判所によって選任される不在者財産管理人ですが、どのような人がなれるのでしょうか。

不在者財産管理人の候補者や選任後の役割は以下のとおりです。

  • 親族や利害関係者も候補者になれるか?
  • 司法書士など専門家が選任されるケースとその理由
  • 選任された不在者財産管理人のおもな権限と義務
  • 不在者財産管理人は行方不明の相続人を捜索するのか?

ここでは、不在者財産管理人の候補者や役割について解説します。

親族や利害関係者も候補者になれるか?

法律上、不在者財産管理人になるための特別な資格は定められていません。そのため、理論上は不在者の親族や、申立人自身を含む他の相続人などの利害関係者も候補者になることは可能です。

しかし、不在者財産管理人は、不在者の財産を公平に管理し、不在者の利益を保護する立場にあります。

そのため、他の相続人と利害が対立する可能性がある場合(例えば、遺産分割で特定の相続分を主張したいと考えている場合など)は、公平性の観点から候補者として適格でないと判断されることが多いです。

家庭裁判所は、不在者の財産状況、利害関係の有無、管理能力などを総合的に考慮して、最も適任と思われる人を選任します。申立人が候補者を推薦した場合でも、必ずしもその人が選任されるわけではないことを理解しておく必要があります。

司法書士など専門家が選任されるケースとその理由

実務上は、申立人が推薦した候補者がいない場合や、いても家庭裁判所が不適格と判断した場合、また、管理すべき財産が多い、法律関係が複雑であるといったケースでは、司法書士などの法律専門家が不在者財産管理人として選任されることが多くあります。

専門家が選任されるおもな理由は以下の通りです。

  • 中立性・公平性
    専門家は、特定の相続人の利益に偏ることなく、中立的な立場で不在者の財産を管理し、法に従って職務を遂行することが期待できます。
  • 専門知識と実務経験
    財産管理や法律手続きに関する専門知識と実務経験が豊富であるため、複雑な事案にも適切に対応できます。
  • 責任能力
    専門職としての責任感があり、万が一のトラブルにも対応できる体制が整っています。

専門家が選任された場合、その報酬は原則として不在者の財産から支払われますが、不在者に十分な財産がない場合は、申立人が予納金として負担した費用から充当されることになります。

選任された不在者財産管理人のおもな権限と義務

不在者財産管理人には、不在者の財産を管理するために必要な権限が与えられますが、同時にいくつかの義務も負います。

おもな権限

  • 財産目録の作成・提出
    選任後、速やかに不在者の財産の調査を行い、財産目録を作成して家庭裁判所に提出します。
  • 保存行為
    財産の価値を維持するための行為(例:家屋の修繕、期限の到来した債務の弁済など)は、家庭裁判所の許可なく行うことができます。
  • 管理行為(家庭裁判所の許可が必要なもの)
    保存行為を超える行為、例えば、不在者の財産を売却したり、賃貸借契約を解除したり、遺産分割協議に参加したりする場合には、事前に家庭裁判所の許可(権限外行為許可)を得る必要があります。この許可を得ることで、不在者財産管理人は不在者に代わって有効に法律行為を行うことができます。
 

おもな義務

  • 善管注意義務(善良な管理者の注意義務)
    自己の財産に対するのと同一の注意ではなく、その職業や社会的地位に応じて一般的に要求される程度の注意をもって、不在者の財産を管理する義務を負います。
  • 家庭裁判所への報告義務
    家庭裁判所からの指示に従い、財産の管理状況や収支について定期的に報告する義務があります。
  • 任務終了時の計算報告義務
    不在者が戻ってきた場合や死亡した場合など、任務が終了した際には、管理の計算を行い、不在者本人またはその相続人に財産を引き継ぎます。
 

不在者財産管理人は行方不明の相続人を捜索するのか?

しばしば誤解されがちですが、不在者財産管理人の主たる任務は、不在者の財産を適切に管理・保全し、必要な法律行為を行うことであり、行方不明の相続人を積極的に捜索することではありません。

もちろん、職務を行う上で、不在者の手がかりが見つかる可能性はありますが、警察や探偵のように専門的な捜索活動を行うわけではありません。

ただし、遺産分割協議を進めるにあたり、不在者の意向を確認できるに越したことはないため、管理人が可能な範囲で連絡を試みることはあり得ます。しかし、それはあくまで職務の一環として行われるものであり、捜索そのものが目的ではないことを理解しておく必要があります。

もし、行方不明者の捜索を強く希望する場合は、別途、探偵などの専門業者への依頼を検討しましょう。

不在者財産管理人選任後の遺産分割と注意すべきポイント

不在者財産管理人選任後の遺産分割と注意すべきポイント

無事に不在者財産管理人が選任された後、いよいよ止まっていた遺産分割協議を進めることができます。

選任後の遺産分割に関するおもなポイントは以下のとおりです。

  • 不在者財産管理人が参加する遺産分割協議の進め方
  • 不在者財産管理人の報酬はいつ、誰が支払うのか?
  • もし行方不明だった相続人が現れたらどうなる?
  • 不在者財産管理人が不在者の死亡を確認した場合

ここでは、不在者財産管理人選任後の遺産分割について解説します。

不在者財産管理人が参加する遺産分割協議の進め方

不在者財産管理人は、行方不明の相続人の法定代理人として、他の相続人と共に遺産分割協議に参加します。

  1. 協議の開始
    他の相続人と不在者財産管理人の間で、遺産の分け方について話し合いを行います。不在者財産管理人は、不在者の法定相続分を基本としつつ、不在者の利益を最大限に考慮して協議に臨みます。
  2. 家庭裁判所への権限外行為許可の申立て
    遺産分割協議の内容がまとまったら、不在者財産管理人はその内容で遺産分割を行うことについて、家庭裁判所に「権限外行為許可の審判」を申し立てます。これは、遺産分割という重要な法律行為を行うために必要な手続きです。
    申立書には、遺産分割協議案や財産目録などを添付します。家庭裁判所は、その遺産分割の内容が不在者にとって不利益なものでないかなどを審査します。
  3. 許可審判と遺産分割協議書の作成
    家庭裁判所から許可の審判が下りれば、不在者財産管理人はその内容に従って遺産分割協議書に署名・捺印することができます。これにより、法的に有効な遺産分割協議が成立します。
  4. 遺産分割の実行
    成立した遺産分割協議書に基づき、預貯金の解約や不動産の名義変更などの手続きを進めます。

不在者財産管理人は、あくまで不在者の利益を守る立場ですので、他の相続人が一方的に有利になるような分割案には同意しません。公平な分割を目指すことが重要です。

参照:民法第28条|e-Gov法令検索

参照:不在者の財産管理人の権限外行為許可の申立書|裁判所

不在者財産管理人の報酬はいつ、誰が支払うのか?

不在者財産管理人の報酬は、原則として不在者の財産の中から支払われます。報酬額は、管理した財産の額、管理の期間や内容、事務の難易度などを考慮して、家庭裁判所が決定します。

選任申立ての際に申立人が予納金を納めている場合は、まずその予納金から報酬や管理費用が支払われます。不在者に十分な財産があり、予納金で不足する場合は、不在者の財産から追加で支払われることになります。

報酬の支払時期は、任務終了時や、家庭裁判所が相当と認めた時期となります。

もし、不在者にほとんど財産がなく、予納金も申立人が負担した場合、結果的に申立人が不在者財産管理人の報酬を負担した形になることもあります。

参照:民法第29条|e-Gov法令検索

参照:不在者財産管理人選任|裁判所

もし行方不明だった相続人が現れたらどうなる?

不在者財産管理人が選任された後に、行方不明だった相続人が現れた場合、またはその所在が判明した場合は、不在者財産管理人の任務は原則として終了します。

  1. 家庭裁判所への報告
    不在者本人や申立人、または不在者財産管理人自身が、不在者が現れたことを家庭裁判所に報告します。
  2. 管理人の権限消滅
    家庭裁判所が不在者本人が財産を管理できる状態になったと認めれば、不在者財産管理人の権限は消滅します。
  3. 財産の引継ぎ
    不在者財産管理人は、それまでの管理状況を本人に報告し、管理していた財産を本人に引き継ぎます。
  4. それまでに行った行為の効力
    不在者財産管理人が家庭裁判所の許可を得て行った法律行為(例えば、遺産分割協議や財産の処分など)は、原則として有効です。本人が後からそれを覆すことは困難です。
 

ただし、本人が戻ってきたタイミングによっては、遺産分割協議が完了しているか否かで状況が変わります。協議中に戻ってきた場合は、本人が協議に参加することになります。

参照:民法第25条2|e-Gov法令検索

参照:民法第27条1|e-Gov法令検索

不在者財産管理人が不在者の死亡を確認した場合

不在者財産管理人が職務を遂行する中で、行方不明だった相続人が実は死亡していたことが判明するケースもあります。

この場合、不在者財産管理人の任務は終了します。そして、その死亡した相続人について、通常の相続手続き(つまり、その人の相続人が誰になるのかを確定し、遺産を承継する手続き)が開始されることになります。

もし、当初の被相続人の遺産分割協議がまだ終わっていなければ、死亡した相続人の相続人(例えば、その人の子や配偶者)が、遺産分割協議に参加することになります。

状況によっては、失踪宣告の手続きに移行することも検討されます。

手続きに不安や困難を感じる際は、専門家に相談

行方不明の相続人がいるために遺産分割が進まないという難しい状況では、法的な解決策として「不在者財産管理人」制度の活用が有効です。

この制度を利用すれば、行方不明の相続人に代わって財産を管理し、止まっていた遺産分割協議を進めることが可能となるでしょう。

ただし、家庭裁判所への申立てから不在者財産管理人の選任、そして実際の遺産分割に至るまでには、いくつかの段階があり、それぞれに手続きや費用、期間、注意すべき点が存在します。

これらの手続きは専門的な知識を要し、対応に時間と労力がかかることも少なくありません。

もし、ご自身で手続きを進めることに迷いや困難を感じる場合には、相続問題に対応している司法書士などの専門家に相談することも一つの方法です。行方不明の相続人がいる場合は、ぜひ、ご相談ください。

相続手続きは自分でもできます。ですが…

相続手続きは非常に複雑で時間がかかる手続きです。また仕事や家事で忙しい合間に手続きをするのはとても労力がいることです。

  • 自分で手続きしようとしたが挫折した…
  • 予期せぬ相続人が現れた…
  • 相続人の一人が認知症で困っている
  • 故人の財産を全部把握できない

など「どうしたらいいか分からない」という事態に陥りやすいのが相続手続きです。

率直に言わせていただくと、これらは初めてやる方にはとても大変な作業です。

時間も手間もかかります。相続人が知らない預貯金や不動産を調査しなければ数年後に困った事態が発生することが多くあります。

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そんな面倒で複雑な相続手続きを相続の専門家である司法書士が、一括してお引き受けするサービスです。相続人調査(戸籍収集)や遺産分割協議書の作成、預金口座や不動産の名義変更などの相続手続きをまとめて代行いたします。

相続発生後、早めに手続きを行わないと相続関係が複雑化したり、他の相続人と揉め事になったり、環境の変化などにより、手続きが難しくなってしまう恐れがあります。そのため相続が発生したらなるべく早いうちから相続手続を開始することをお勧めしております。

「こういう場合はどうすればいいの?」「困ったことが起きてしまった」というご相談を無料で受けております。何をすればいいか分からない。どう進めていいか分からない。生き別れの相続人がいるはず。などでもご不安なことがあれば、まずは無料相談をご利用ください。

依頼する、依頼しないは、無料相談後にお決めいただけます。もちろん守秘義務もございますし、無料相談後しつこく営業の連絡をすることもありません。

ここまで読まれた方は、きっと相続手続きで分からないことがあり、どうすればいいか気になっているのではないでしょうか?

または、今後のために知っておきたい、というお気持ちかもしれません。今現在お困りの方はもちろんの事、いざという時のために今からできることもお伝えできますので、まずは無料相談をご利用ください。

この記事を書いた人

司法書士・行政書士
福池達也

司法書士試験に合格後、司法書士法人にて研鑽。
家族の相続時、金銭により人間関係が悪くなる辛さを身をもって経験し、よりご相談者に寄り添った仕事をするために独立。相続手続をまるごとお任せいただけるサービスを行っている。

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