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相続土地国庫帰属制度とは?
相続における利用例とメリットについて解説

相続土地国庫帰属制度とは?相続における利用例とメリットについて解説

冒頭

こんにちは。【札幌相続遺言プラザ】ふくちたつや司法書士・行政書士事務所の福池達也です。

相続によって遠方の土地を受け継いだけれども、管理が難しいと感じている方は多いのではないでしょうか?

特に、使う予定のない農地や山林が相続財産に含まれている場合、その維持費や管理の手間が大きな負担です。

そこで注目したいのが、相続土地国庫帰属制度です。本記事では、この制度の概要から具体的な利用例、メリット・デメリット、手続き方法まで解説します。

相続土地国庫帰属制度とは?

相続土地国庫帰属制度とは?

相続土地国庫帰属制度の概要は以下のとおりです。

  • 相続した土地を国に帰属させることができる制度
  • 背景は人口減少や高齢化による土地の放棄問題
  • 目的は所有者不明土地の発生の抑制

ここでは、相続土地国庫帰属制度の全体像を解説します。

相続した土地を国に帰属させることができる制度

相続土地国庫帰属制度は、相続により取得した土地を国に帰属させることができる制度です。この制度を利用すれば、相続人は土地の管理や維持に関する負担から解放されます。

手続きとしては、法務大臣に対して土地の所有権を国庫に帰属させることについて承認を申請し、承認を受けるという流れです。

承認を受けるには、例えば、土地に建物が存在しないことや、土壌汚染がないといった条件を満たす必要があり、もし承認されれば、一定の負担金を納付します。

この制度は、特に相続による土地の管理が難しい場合に有用です。

背景は人口減少や高齢化による土地の放棄問題

相続土地国庫帰属制度の背景には、人口減少や高齢化に伴う土地の放棄問題があります。

地方の過疎地では相続人が土地を管理できず、放置されるケースが増えており、土地は地域の景観や環境に悪影響を与えるだけでなく、固定資産税の滞納問題も引き起こします。

また、都市部でも利用価値の低い土地が相続されると管理が困難になる場合があり、これらの問題を解決するために、国が土地を引き取る仕組みが導入されました。

相続土地国庫帰属制度により、相続人は不要な土地を手放し、国が適切に管理することで、地域全体の土地利用の改善が期待されています。

目的は所有者不明土地の発生の抑制

相続土地国庫帰属制度は、相続人が土地を相続した際に生じる管理や維持の負担を軽減し、所有者不明の土地の発生の抑制を目的としています。

所有者不明土地は、登記が更新されず、相続手続きが完了していない場合などに発生しやすく、管理が行き届かず放置されることが多いです。

所有者不明土地が増えると、自治体の管理負担が増加し、公共サービスの提供にも支障をきたします。また、土地の有効活用が阻まれ、地域経済の発展にも悪影響を与えます。

相続土地国庫帰属制度は、これらの問題を解決するために設けられました。土地の適正な管理と利用を促進し、社会全体の利益に貢献することが期待されています。

参照:相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律|e-Gov法令検索
参照:所有者不明土地や低未利用地に係る問題と税制 |国税庁

相続土地国庫帰属制度の利用要件と対象土地

相続土地国庫帰属制度の利用要件と対象土地

相続土地国庫帰属制度を利用するには、以下に注意しましょう。

  • 主な対象は利用価値が低い土地
  • 利用者の資格と条件
  • 土地が引き取られるための基準

ここでは、この制度の利用要件や対象となる土地について解説します。

主な対象は利用価値が低い土地

相続土地国庫帰属制度の対象となるのは、主に利用価値が低い土地です。具体的には、山林や原野、農地などが該当し、個人での管理が難しく維持費や税金の負担が大きいため、相続人が手放したいと考えることが多い土地です。

利用価値の低い土地は、国が管理することで公共の利益に供することが可能で、例えば、自然保護区として整備されたり、公共施設の建設用地として利用される可能性があります。

相続土地国庫帰属制度により、利用価値の低い土地を国に帰属させ、相続人と社会双方にメリットが生まれることが期待されています。

利用者の資格と条件

相続土地国庫帰属制度を利用できるのは、相続や遺贈により土地を取得した個人で、法人は基本的にこの制度を利用できません。

また、申請者は土地の共有持分を有する全員で共同して申請する必要があり、例えば、兄弟姉妹で共有している土地の場合は全員の同意が必要です。

さらに、申請者は土地の管理や処分に過度の費用や労力がかからないことを法務大臣に判断してもらう必要があるため、土地の状態や利用状況について詳細な調査が行われます。

このような条件により、不適切な土地が国庫に帰属されないように制限されています。

土地が引き取られるための基準

土地が国庫に帰属されるためには、以下のような基準を満たす必要があります。

  • 土地に建物や工作物が存在しない
  • 土壌汚染や教会紛争がない
  • 土地が公共の利用や管理に適している

例えば、斜面地や水害の危険がある土地は引き取られない可能性がありますが、これらの基準を満たす土地は、所有権が国に帰属され、相続人は土地の管理から解放されます。

相続土地国庫帰属制度を利用する具体例

相続土地国庫帰属制度を利用する具体例

相続土地国庫帰属制度は、特に以下のような相続人が管理に困難を感じる場合に有効です。

  • ①過疎地にある農地の相続
  • ②都市郊外の未利用住宅地の相続
  • ③遠方に住む親族からの山林の相続

ここでは、具体的なシチュエーションごとに、この制度がどのように活用できるかを解説します。

①過疎地にある農地の相続

地方の山間部にある農地は、都市部に住む相続人にとって管理が難しいことが多く、このような土地は国庫帰属制度を利用して国に引き取ってもらえる可能性があります。

農地は、管理が行き届かないと荒れ地になり、周囲に悪影響を与えることがありますが、国が引き取れば、農地の保全や再利用が進みやすいです。

また、相続人は維持管理の負担から解放されるため、過疎地の農地の管理に困っている場合、この制度を検討する価値があります。

②都市郊外の未利用住宅地の相続

都市郊外の未利用住宅地を相続した場合も、国への帰属が認められる可能性があります。

例えば、都心から離れた場所にある住宅地は、相続人が遠方に住んでいると管理が難しくなることがあり、空き地や空き家は、防犯や防災の観点からも問題となることがあります。

このような場合、未利用地が公共施設の建設用地として活用されるなど、国に土地を帰属させれば適切な管理が期待できます。

相続人にとっては、管理負担が減り、地域社会にも貢献できるため、一石二鳥の解決策となるでしょう。

③遠方に住む親族からの山林の相続

山林の管理は専門知識や多大な労力が必要であり、遠方に住む相続人にとっては大きな負担です。特に、定期的な森林管理や伐採が必要な場合、現地に赴くことが困難です。

このような山林を国に帰属させれば、森林保全や再生プロジェクトに活用されるなど適切な管理が期待できます。

遠方に住む親族から山林を相続して困っている場合、相続土地国庫帰属制度の利用を検討してもよいでしょう。

相続土地国庫帰属制度のメリットとデメリット

相続土地国庫帰属制度のメリットとデメリット

相続土地国庫帰属制度を利用する際には、以下を確認しましょう。

  • 相続人は不要な土地の管理から解放される
  • 手続きが煩雑で負担金も発生する
  • よくある誤解とその対策

ここでは、この制度のメリットとデメリットを解説します。

相続人は不要な土地の管理から解放される

相続土地国庫帰属制度の最大のメリットは、相続人が不要な土地の管理から解放されることでしょう。

例えば、遠方にある土地や利用価値が低い土地を相続した場合、固定資産税の支払いも継続的に発生し、維持管理は大きな負担となります。

この制度を利用すれば、土地の所有権を国に帰属させられ、経済的負担から解放され、また、土地の管理にかかる時間や労力も節約できます。

また、国による土地の適切な管理によって、周辺地域の環境保全にも期待でき、不要な土地の管理に困っている相続人にとって有益です。

手続きが煩雑で負担金も発生する

その一方で、相続土地国庫帰属制度にはデメリットも存在し、書類の準備や提出に多くの時間と労力を要するなど、手続きの煩雑さがあげられます。

例えば、土地の位置や範囲を明確にする図面の作成や、隣接土地との境界を示す写真の提出が必要です。

また、審査手数料として土地一筆あたり14,000円がかかり、国庫帰属の承認を受けるためには一定の負担金も納付しなければなりません。

負担金の額は基本的に20万円ですが、土地の種類や面積によってはさらに高額になることがあります。このように、手続きや費用がかかる点にはご注意ください。

参照:相続土地国庫帰属制度の概要|法務省
参照:相続土地国庫帰属制度の負担金|法務省

よくある誤解とその対策

メリット・デメリットだけでなく、相続土地国庫帰属制度に関して、「申請すればすべての土地が簡単に国に帰属される」という誤解もあります。

実際には厳格な基準が設けられており、申請された土地がすべて受理されるわけではありません。

例えば、土壌汚染がある土地や建物が存在する土地は、承認されない可能性が高いです。

また、制度の利用には審査手数料や負担金がかかるため、無料で土地を手放せるわけではありません。

制度の詳細をよく理解し、相続についてお困りのことがあれば専門家に相談することをおすすめします。

相続土地国庫帰属制度の負担金

相続土地国庫帰属制度の負担金

相続土地国庫帰属制度の負担金については以下を確認しましょう。

  • 負担金の計算方法
  • 負担金の支払い方法
  • 負担金に影響を与える要素

ここでは、負担金の詳細について解説します。

負担金の計算方法

相続土地国庫帰属制度の負担金は、基本的には20万円ですが、市街化区域内の宅地や農地、森林などの場合、面積に応じて負担金が増加します。

具体的には、土地の地積が大きいほど負担金も高くなり、例えば1,000平方メートルの森林であれば、

(1,000㎡ × 24円/㎡) + 237,000 = 261,000円

となります。

負担金は、元の土地所有者が管理の負担を免れる程度に応じて、国に発生する管理費用の一部を支払うもので、支払いは帰属承認時の一回限りです。

参照:相続土地国庫帰属制度の負担金|法務省

負担金の支払い方法

負担金の支払い方法は、以下の2つです。

まず、日本銀行や日本銀行代理店(金融機関)での窓口納付が可能です。この場合、納入告知書を持参し、現金で支払います。

次に、インターネットバンキングやモバイルバンキングを利用した電子納付も可能です。この方法では、納付番号を入力して手続きを行います。

納付期限は、承認通知書を受領した翌日から30日以内となっています。期限を過ぎると承認が失効し、土地の国庫帰属が取り消されることになりますので、注意しましょう。

参照:相続土地国庫帰属制度に関するQ&A|法務省

負担金に影響を与える要素

負担金の額に影響を与える要素はいくつかあります。

まず、土地の種類と地積が主要な要因で、市街化区域内の宅地や農地、広大な森林などは、標準の20万円以上の負担金が必要となることがあります。

また、土地の利用状況や管理の難易度も影響し、例えば、管理が難しい斜面地や、維持費用が高い土地は、追加の費用がかかるかもしれません。

さらに、土地の所有権に関する紛争や法的問題がある場合、負担金が増加することもあります。

これらの要素を考慮して、事前にしっかりと計算し、必要な準備を行いましょう。

相続土地国庫帰属制度の手続き方法と必要書類

相続土地国庫帰属制度を利用する際には、以下を確認しましょう。

  • 手続きの流れ
  • 申請に必要な書類
  • 手続きの所要時間と注意点

ここでは、具体的な手続きの流れや必要な書類について解説します。

手続きの流れ

まず、法務局・地方法務局の窓口で相談を行い、申請の適格性を確認します。

次に、必要書類を準備し、承認申請書を作成しましょう。申請書には、土地の位置や範囲を示す図面、隣接土地との境界を示す写真などが含まれます。

それから申請書と添付書類を提出し、審査手数料を納付しましょう。その後、法務局による審査が行われ、必要に応じて現地調査が実施されます。

審査が完了すると、承認通知書と負担金の納入告知書が送付され、負担金を納付すれば土地の国庫帰属は完了です。

申請に必要な書類

相続土地国庫帰属制度の申請には、以下の書類が必要です。

まず、承認申請書を提出します。この申請書には、土地の位置や範囲を示す図面、隣接土地との境界を示す写真、土地の形状を示す写真などが添付されます。

また、申請者の印鑑証明書も必要です。場合によっては、土地の所有権に関する証明書や相続関係を示す書類も求められます。

さらに、土地が農地や森林の場合、追加の書類が必要となることがあります。

申請に際しては、これらの書類を不備なく揃えて審査がスムーズに進行するように努めてください。

参照:相続土地国庫帰属制度に関するQ&A|法務省

手続きの所要時間と注意点

相続土地国庫帰属制度の手続きには、一定の時間がかかります。

標準的な処理期間は約8か月とされていますが、個々の事案によってはさらに長期間かかることもあります。

特に、現地調査や追加書類の提出が必要な場合は、時間が延びる可能性が否めません。

また、手続きの途中で申請者の連絡先や住所が変更された場合は、速やかに法務局に通知しましょう。

手続きが完了するまで土地の管理は申請者が行う必要がある点にもご注意ください。

相続についてお困りのことがあれば、専門家に相談

相続土地国庫帰属制度は、相続した土地を国に帰属させることで管理の負担を軽減できる制度です。

背景には、人口減少や高齢化による土地の放棄問題がありますが、利用価値の低い土地など一定の条件を満たせば、相続した土地の固定資産税の負担を軽減でき、不要な土地の管理責任から解放されます。

土地の国庫帰属制度の申請は、通常の相続手続きに加えて煩雑な手続きですので、利用価値の低い土地を相続する際には、専門家にご相談ください。

相続手続きは自分でもできます。ですが…

相続手続きは非常に複雑で時間がかかる手続きです。また仕事や家事で忙しい合間に手続きをするのはとても労力がいることです。

  • 自分で手続きしようとしたが挫折した…
  • 予期せぬ相続人が現れた…
  • 相続人の一人が認知症で困っている
  • 故人の財産を全部把握できない

など「どうしたらいいか分からない」という事態に陥りやすいのが相続手続きです。

率直に言わせていただくと、これらは初めてやる方にはとても大変な作業です。

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この記事を書いた人

司法書士・行政書士
福池達也

司法書士試験に合格後、司法書士法人にて研鑽。
家族の相続時、金銭により人間関係が悪くなる辛さを身をもって経験し、よりご相談者に寄り添った仕事をするために独立。相続手続をまるごとお任せいただけるサービスを行っている。

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