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生命保険と相続
生命保険の死亡保険金は、遺産分割協議の対象となる?

生命保険と相続 生命保険の死亡保険金は、遺産分割協議の対象となる?

こんにちは。【札幌相続遺言プラザ】ふくちたつや司法書士・行政書士事務所の福池です。

生命保険の被保険者が死亡した場合、加入の保険内容にしたがって、死亡保険金が支払われることとなります。

加入の保険内容により異なりますが、数百万円、数千万円と多額の保険金が支払われることも少なくありません。

死亡保険金は、保険契約締結等に設定した受取人が受け取ることとなりますが、ここで「生命保険の死亡保険金が遺産分割協議の対象となるか」といった疑問が発生されるかと思います。


この記事では「生命保険の死亡保険金が遺産分割協議の対象となるか」について詳しく解説いたします。

併せて、「相続放棄をしても死亡保険金を受け取れるのか」、「死亡保険金と相続税」、「生命保険契約照会制度」についても解説いたします。

死亡保険金は遺産分割協議が必要か?

原則、死亡保険金は受取人の固有の財産となるため、遺産分割協議の対象ではありません。

しかし、受取人の指定により、例外として遺産分割協議の対象となる場合がありますので、注意が必要です。

以下ではケースごとに遺産分割協議が必要かどうかを解説いたします。

なお、保険契約者と被保険者が、ともに被相続人の場合を前提に解説いたします。

特定の人物を指定した場合

妻や子など特定の人物を受取人に指定していた場合、死亡保険金は保険契約で定められた受取人の固有の財産となるため、相続財産ではありません。

そのため、死亡保険金は、遺産分割協議の対象とはなりません。死亡保険金を遺産分割協議書に記載する必要もありません。

この場合、受取人に指定された者は他の相続人の同意なしに死亡保険金を受け取ることができます。

単に「相続人」と指定した場合

妻や子など特定の人物を受取人に指定せず、単に「相続人」と指定した場合であっても、上記と同様に死亡保険金は遺産分割協議の対象とはなりません。

この場合、特段の事情がない限り、法定相続分の割合に従い、死亡保険金を分配することとなります。

なお、約款に割合の定めがある場合には、その定めに従い分配することとなります。

裁判要旨

保険契約において保険契約者が死亡保険金の受取人を被保険者の「相続人」と指定した場合は、特段の事情のない限り、右指定には相続人が保険金を受け取るべき権利の割合を相続分の割合によるとする旨の指定も含まれ、各保険金受取人の有する権利の割合は相続分の割合になる。(最判平成6・7・18民集第48巻5号1233頁)

受取人を指定していない場合

受取人の指定がない場合、約款に「相続人に支払う」旨の定めがあることがほとんどです。

そのため、単に「相続人」と指定した場合と同様に遺産分割協議の対象とならず、約款の定めに従い死亡保険金を受け取ることとなります。

被保険者自身を受取人に指定した場合

受取人を被保険者である被相続人に指定していた場合、死亡保険金は被相続人の相続財産に含まれます。

そのため、遺産分割協議の対象となります。

受取人がすでに死亡していた場合

受取人に指定された者が先に死亡していた場合、死亡保険金は受取人に指定された者の相続人が受け取ることとなります。

受け取ることとなるのは、受取人の相続人であり、被保険者の相続人ではありませんので注意が必要です。

保険金受取人が保険事故の発生前に死亡したときは、その相続人の全員が保険金受取人となる。(保険法第46条)

受け取る金額は、相続人数で均等に分けることとなります。相続人が妻であっても子供・兄弟姉妹であっても関係なく、頭数で均等に分配します。(民法第427条)

 

この場合、遺産分割協議の対象とはなりません。

数人の債権者又は債務者がある場合において、別段の意思表示がないときは、各債権者又は各債務者は、それぞれ等しい割合で権利を有し、又は義務を負う。(民法第427条)

特別受益に当たるのか

原則、死亡保険金は受取人の固有の財産となるため特別受益には当たりません。

例外として、死亡保険金の額が遺産総額に比べ、多額の場合には、特別受益と認定される場合も稀にありますので、注意が必要です。

特別受益(民法第903条1項)

共同相続人中に、被相続人から、遺贈を受け、又は婚姻若しくは養子縁組のため若しくは生計の資本として贈与を受けた者があるときは、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額にその贈与の価額を加えたものを相続財産とみなし、第900条から第902条までの規定により算定した相続分の中からその遺贈又は贈与の価額を控除した残額をもってその者の相続分とする。

相続放棄をしても死亡保険金を受け取れる?

相続放棄とは、被相続人の一切の財産(不動産や預貯金などのプラスの財産だけでなく、借金などのマイナスの財産も含む)を引き継がなくなることをいいます。

死亡保険金はプラスの財産なので相続放棄をすると死亡保険金を受け取ることが出来ないのではと疑問に思うかもしれません。しかしながら、上記でも述べた通り、死亡保険金は死亡した方の相続財産ではなく、受取人の固有の財産です。


そのため、受取人である相続人が相続放棄をした場合であっても、死亡保険金を受け取ることができます。

例えば、契約者及び被保険者が夫、受取人が妻の場合、死亡保険金は夫の財産ではなく、妻の財産となります。多額の借金を抱え夫が死亡し、妻が相続放棄をした場合であっても、妻は死亡保険金を受け取ることが出来ます。

受取人が単に「相続人」となっていた場合は?

受取人が単に「相続人」となっていた場合でも、考え方は同様です。相続人が相続放棄をしても、死亡保険金を受け取ることが可能です。

相続放棄をすると死亡保険金を受け取れない場合がある

原則、相続放棄をしても、死亡保険金を受け取ることが出来ます。例外的に相続放棄をしてしまうと死亡保険金を受け取ることが出来なくなってしまう場合があります。

それは、受取人が被相続人(つまり被相続人が被保険者であり受取人ということ。)の場合には、相続人が相続放棄をしてしまうと、死亡保険金を受け取ることが出来なくなります。

これは、死亡保険金は受取人の固有の財産であるため、受取人を被相続人に指定してる場合には、死亡保険金は被相続人の相続財産となってしまい、相続放棄をすると被相続人の死亡保険金を含め一切の財産を引き継がなくなるため、死亡保険金も受け取ることが出来なくなります。

この場合、誤って死亡保険金を受け取ってしまうと、相続放棄が無効となってしまう恐れがありますので注意が必要です。

死亡保険金と相続税

ここまで死亡保険金は受取人の固有の財産であり、被相続人の相続財産にあたらないため、遺産分割協議の必要はないと解説してきました。

しかし、相続税法において死亡保険金は「相続又は遺贈により取得したもの」とみなされ、相続税の課税対象となります(相続税法第3条1項1号)。これを「みなし相続財産」といいます。

つまり、受取人の指定がある場合、その受取人は他の相続人の同意を得ることなく、死亡保険金を受け取ることが出来るが、相続税の計算おいては死亡保険金を含めるといった結論になります。

なお、死亡保険金の全額が課税対象となるわけでなく、一定額については非課税枠が設けられております。

みなし相続財産とは?

「みなし相続財産」は、民法上の相続財産ではないが、相続税を計算する際に相続財産とみなして相続税を課税する財産を「みなし相続財産」といいます。

代表的なものとして、死亡保険金と死亡退職金などが挙げられます。

死亡保険金や死亡退職金は、被相続人に帰属していた財産ではなく、被相続人から相続人に引き継がれる財産でもありません。あくまで被相続人の死亡を契機に保険会社や所属していた会社から、直接、受取人自身に渡される財産です。

そのため、相続財産ではありませんが、被相続人の死亡により財産を取得することとなるため、相続税法上はみなし相続財産として扱われます。

死亡保険金の非課税限度額

死亡保険金には一定額までは非課税限度枠があり、それを超える部分が相続税の課税対象となります。

500万円×法定相続人の数=非課税限度額

死亡保険金を分配したら贈与となる

死亡保険金は受取人の固有の財産であるため、受取人から他の相続人に死亡保険金の一部を分配する場合、それは遺産分割ではなく、受取人の財産を他の相続人に対し贈与したとみなされます。

この場合、贈与を受けた他の相続人には贈与税が課税されるため注意が必要です。

なお、贈与税には年間110万円までの非課税枠がありますので、その範囲内でしたら贈与税はかかりません。

生命保険契約照会制度について

死亡保険金はそもそもどこの保険会社と契約していたかを把握していなければ、受取人は請求することが出来ません。

しかしながら、お一人でお亡くなりになったり、認知症を発症した場合、生命保険契約の有無を把握していないことも少なくありません。

生命保険契約の手がかりがなくて困っている方のために、親族等が申し出れば保険契約の有無を一括照会できる「生命保険契約照会制度」が令和3年7月から始まりました。

生命保険契約照会制度は、死亡した方の保険契約の有無も照会することが出来るので、お困りの方は一度利用してみることをお勧めします。

照会できる方の範囲

照会できる方は以下のとおりです。

  1. 被相続人の法定相続人
  2. 被相続人の法定相続人の法定代理人または任意代理人(※)
  3. 被相続人の遺言執行者

​(※)任意代理人の範囲は、弁護士、司法書士その他照会対象者の財産管理を適切に行うために照会対象者にかかる生命保険契約の有無を照会するにふさわしいと一般社団法人生命保険協会が認めた者とします。

必要書類

照会にあたり、一般社団法人生命保険協会所定の申込書類や以下の必要書類の提出が必要となります。

被相続人の法定相続人
  1. 照会者の本人確認書類
  2. 法定相続情報一覧図 または 相続人と被相続人の関係を示す戸籍等
  3. 被相続人の死亡診断書
被相続人の法定相続人の法定代理人
  1. 照会者の本人確認書類
  2. 法定代理権の確認書類(登記事項証明書等)
  3. 法定相続情報一覧図 または 相続人と被相続人の関係を示す戸籍等
  4. 被相続人の死亡診断書
被相続人の法定相続人の任意代理人
  1. 照会者の本人確認書類
  2. 任意代理権の確認書類(委任状等)
  3. 法定相続情報一覧図 または 相続人と被相続人の関係を示す戸籍等
  4. 被相続人の死亡診断書
被相続人の遺言執行者
  1. 照会者の本人確認書類
  2. 印鑑証明書
  3. 遺言書
  4. 遺言者の死亡の記載のある戸籍等

照会の流れ

上記でご案内した必要書類を集めます。その後、申込書類に必要事項を記載し、必要書類と一緒にオンライン又は郵送にて申請します。

一般社団法人生命保険協会にて照会内容や必要書類の確認をし、不備等がなければ利用料の決済についてのご案内が届きます。利用料は照会1件につき3,000円となります。支払方法はクレジットカード払い又はコンビニ払いとなります。

利用料の決済が確認ができ次第、生命保険の有無につき調査が開始され、2週間程度で調査の結果がでます。

お申込みや制度についての確認は一般社団法人生命保険協会のホームページで確認できます。

https://www.seiho.or.jp/

相続手続きは自分でもできます。ですが…

相続手続きは非常に複雑で時間がかかる手続きです。また仕事や家事で忙しい合間に手続きをするのはとても労力がいることです。

  • 自分で手続きしようとしたが挫折した…
  • 予期せぬ相続人が現れた…
  • 相続人の一人が認知症で困っている
  • 故人の財産を全部把握できない

など「どうしたらいいか分からない」という事態に陥りやすいのが相続手続きです。

率直に言わせていただくと、これらは初めてやる方にはとても大変な作業です。

時間も手間もかかります。相続人が知らない預貯金や不動産を調査しなければ数年後に困った事態が発生することが多くあります。

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相続発生後、早めに手続きを行わないと相続関係が複雑化したり、他の相続人と揉め事になったり、環境の変化などにより、手続きが難しくなってしまう恐れがあります。そのため相続が発生したらなるべく早いうちから相続手続を開始することをお勧めしております。

「こういう場合はどうすればいいの?」「困ったことが起きてしまった」というご相談を無料で受けております。何をすればいいか分からない。どう進めていいか分からない。生き別れの相続人がいるはず。などでもご不安なことがあれば、まずは無料相談をご利用ください。

依頼する、依頼しないは、無料相談後にお決めいただけます。もちろん守秘義務もございますし、無料相談後しつこく営業の連絡をすることもありません。

ここまで読まれた方は、きっと相続手続きで分からないことがあり、どうすればいいか気になっているのではないでしょうか?

または、今後のために知っておきたい、というお気持ちかもしれません。今現在お困りの方はもちろんの事、いざという時のために今からできることもお伝えできますので、まずは無料相談をご利用ください。

この記事を書いた人

司法書士・行政書士
福池達也

ふくちたつや司法書士・行政書士事務所代表の福池達也司法書士の試験に合格後、札幌の司法書士法人に勤め、不動産登記・借金問題・過払い金の回収などをしていました。

そして、より一人一人のご相談者に寄り添った仕事をするために独立。家族が相続問題に直面し、ちょっとしたきっかけ、特に金銭がからむことで人間関係が悪くなる辛さを身をもって経験。

相続手続きの中でも特に分かりにくい、煩雑な手続きが必要になる相続登記をまるごとお任せいただけるサービスを行っている。

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