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こんにちは。【札幌相続遺言プラザ】ふくちたつや司法書士・行政書士事務所の福池達也です。
民法がおよそ140年ぶりに改正され、2022年4月1日より成人年齢が20歳から18歳に引き下げられることとなりました。
選挙権を持つ年齢や保護者の同意なしに契約できる年齢が引き下げられ、若者の社会参加が促されていますが、成人年齢の引き下げは、相続税や贈与税にどのような影響を与えているのでしょうか?
本記事では、これからの贈与や相続の計画に役立てるために、成人年齢引き下げに伴う相続税や贈与税の変更点について解説します。
成人年齢引き下げは、相続に関して以下のような影響をもたらします。
ここでは、相続における具体的な影響を詳しく解説します。
成人年齢の改正により、未成年者控除の算定方法が変更されました。
従来は、未成年者が20歳になるまでの期間に対して控除が適用されていたのが、改正後は18歳までとなり、控除を受けられる期間が短縮されています。具体的な事例を見てみましょう。
事例1 - 16歳の相続人がいる場合:
改正前: 20歳になるまで4年間の控除が適用され、控除額は40万円(10万円 × 4年)。
改正後: 18歳までの2年間のみ控除が適用され、控除額は20万円に減少します。
事例2 - 15歳の相続人がいる場合:
改正前: 50万円の控除(10万円 × 5年)。
改正後: 30万円の控除(10万円 × 3年)。
事例3 - 複数の未成年相続人がいる家庭:
家庭構成: 16歳と14歳の兄弟が相続人。
改正前: 合計控除額は90万円(40万円 + 50万円)。
改正後: 合計控除額は50万円(20万円 + 30万円)。
このように、成人年齢の引き下げは、相続税の計算において負担増をもたらしたと言えます。
複数の未成年者を抱える家庭など、相続税負担の具体的な影響を把握するためには、改正の詳細と相続人の状況を正確に理解する必要があります。
適切な相続対策を相続計画を見直すには、相続税の計算や対策に強い専門家に相談するのが賢明でしょう。
遺産分割協議の参加資格の変化
成人年齢の引き下げにより、18歳から遺産分割協議に参加できるようになりました。
これまでは20歳未満の未成年者は、親権者または特別代理人を通じて遺産分割協議に参加していましたが、民法改正の施行により、18歳と19歳の若者が自らの意思で直接協議に参加できる機会が増え、今後はより早い段階で自立した判断を求められます。
全般的に、若年者に与えられる法的責任が拡大し、相続権を行使する上での自由度が増したと言えます。
一方で、若年者自身が遺産の分配について深く考え、適切な判断を下す能力が問われるため、十分な法的知識と相談体制の整備も必要となるでしょう。
特別代理人の必要性が減じた
18歳の成人新法施行後、特別代理人の必要性が大幅に減少しました。
以前は、未成年者が相続人である場合、その法定代理人として主に親権者が遺産分割協議に参加していましたが、利益相反の可能性があるために特別代理人が必要でした。
現在では、18歳以上であれば自己の意思で協議に参加できるため、特別代理人を設定する必要があるのは17歳以下の未成年者に限られることになります。
成人年齢引き下げが遺産分割に与える影響
成人年齢の引き下げは、遺産分割協議のプロセスにも多くの変化をもたらしました。
18歳以上の若者が直接協議に参加できるようになったことで、協議の透明性が向上し、協議の進行速度がよりスムーズになるでしょう。
また、若者が自分の意思で遺産分割に関する重要な決定を下すことができるため、家族内のコミュニケーションがよりオープンになるとも考えられます。
ただし、18歳と19歳の若者には未だ経験不足から来るリスクも存在し、適切な判断を下すためには、法的なアドバイスや家族からの支援が不可欠です。家庭内での教育や専門家との連携が、ますます重要となります。
成人年齢引き下げは、贈与においても以下の制度に影響があります。
ここでは、成人年齢引き下げで贈与にどのような影響があるか解説します。
成人年齢の引き下げに伴い、暦年課税制度における特例税率の適用条件が変更されました。
これまでは、特例税率を利用するためには受贈者が20歳以上である必要がありましたが、新たな制定により18歳以上であれば利用可能です。
この変更によって、より多くの若者が軽い税負担で贈与を受けやすくなると予想されています。
例えば、800万円の贈与があった場合、従来なら18歳の子や孫は一般税率が適用され、
のように、151万円の税金がかかりました。
ところが、成人年齢が引き下げられたことにより、18歳で特例税率が適用され、
117万円に抑えられるようになりました。これは贈与を検討している家族にとって大きなメリットとなるでしょう。
ただし、この制度の利用には、厳密に贈与を受ける年の1月1日に18歳以上であるなど、適用条件に注意しましょう。
参照:No.4408 贈与税の計算と税率(暦年課税)|国税庁
相続時精算課税制度は、贈与税の特例措置の一つで、特定の条件下での贈与に対して適用されます。
この制度の最大の特徴は、受贈者が将来相続することが見込まれる贈与者からの贈与に対して相続発生時に課税される通常の贈与税とは異なり、贈与時点で精算する点です。
成人年齢の引き下げにより、この制度の適用を受ける受贈者の年齢要件が20歳から18歳に下がりました。
これによって、より多くの若者が相続時精算課税制度を利用できるようになり、早期から資産形成を支援することが可能となります。
具体的には、父母や祖父母からの贈与であれば、これまでの20歳以上の要件から、18歳以上に緩和されたため、大学生や専門学校生でもこの制度のメリットを享受できるようになりました。
結婚や子育てに関する大きな費用を支援するために設けられている贈与税の非課税措置は、成人年齢の引き下げにより、より多くの若者が利用可能となりました。
具体的には、18歳以上の若者が結婚や子育て関連の資金を直系の親族から贈与される場合、一定の条件下で税金がかからないというもので、若い世代が経済的な負担を少しでも軽減し、より安心して新生活をスタートさせられます。
例えば、結婚資金として親から500万円贈与された場合、この改正前は一定の条件を満たす必要がありましたが、現在は18歳以上であれば非課税の適用を受けることができるようになっています。これは社会的な支援が一層手厚くなった例と言えるでしょう。
ただし、非課税の適用を受けるには、贈与の目的が明確に「結婚・子育て」であることが必要であり、事前にしっかりとした計画がなければなりません。
参照:No.4511 直系尊属から結婚・子育て資金の一括贈与を受けた場合の非課税|国税庁
住宅取得のための資金贈与に関する税制は、特に若年層にとって重要な支援策の一つで、直系親族からの住宅購入資金の贈与に対して、一定額まで贈与税が非課税となるというものです。
例として、自宅を購入するために親から贈与される資金1,000万円に対して、改正前は20歳以上でなければ非課税の適用外でしたが、改正後は18歳以上であれば適用されます。
これにより、若くして独立を考える人々が経済的に大きな助けを得られることになります。
また、非課税限度額は、エコハウスなど一定の条件を満たす住宅にはさらに優遇措置が設けられ、環境への配慮も見られます。
ただし、この制度を活用するためには、購入する住宅が「自己居住用」である必要があり、投資目的での利用は認められていません。
参照:No.4508 直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の非課税|国税庁
事業承継に関する税制も、新しい年齢基準によって若年層の事業継承が促進される見込みです。
これにより、贈与日に18歳であれば事業承継の計画が可能となり、個人の事業用資産の納税猶予や、非上場株式等の納税猶予等などを活用し、よりスムーズな事業の引継ぎが期待できます。
事業承継税制は、中小企業を対象にした税制措置で、事業の円滑な承継を助けるための非常に重要な制度ですが、特に家族経営の中小企業にとっては、事業の持続可能性を高める重要な支援策となるでしょう。
成人年齢の引き下げは、事業承継を計画している若者にとって大きなメリットをもたらし、若い世代が家族経営の事業に早期から関与し、経験を積みながらスムーズな事業の引き継ぎを後押しします。
18歳以上の若者が事業資産を贈与される場合にも、これまでの20歳以上という条件から、更に早い段階で支援を受けられるようになっています。
参照:⺠法の改正 成年年齢引下げ に伴う贈与税・相続税の改正のあらまし|国税庁
成人年齢引き下げは相続登記や相続放棄にも影響があります。
ここでは、未成年は相続放棄も相続放棄をできないことと、成人年齢の変更でどのような影響があるのか見ていきましょう。
未成年者が相続放棄や相続登記を行う場合、法的な制約が多く存在します。特に、未成年者が自ら行うことは法律で認められていません。
未成年者が相続放棄を行いたい場合、その親権者または法定代理人が家庭裁判所に申し立てを行う必要があります。
この申し立てが認められると、特別代理人が選任され、その代理人が未成年者の代わりに相続放棄を行います。
また、不動産の相続登記に関しても未成年者は自力で行うことができません。こちらも法定代理人が手続きを代行する必要があるため、事前に適切な準備が必要です。
具体的には、相続が発生した後に法定代理人が登記申請を行うことになりますが、これには相続人全員の同意が必要とされる場合が多いです。
このように、未成年者は法律行為に多くの制限を受けており、相続においても自身で直接行動を取ることはほとんどできません。
成人年齢の引き下げにより、相続放棄や相続登記を行える年齢が18歳に縮まりました。
これまでは20歳でなければこれらの行為を自ら行うことはできませんでしたが、改正後は18歳から可能となり、より多くの若者が自らの意志でこれらの重要な法律行為を行えるようになりました。
具体的には、18歳になった若者が自ら家庭裁判所に相続放棄の意思表示をすることができるようになる等、自己の法律行為により直接的に自分の法的な立場を決定できるようになります。
また、今回の成人年齢の引き下げは、若者が自身の財産を管理しやすくするだけでなく、法的な責任を持つ重要性を理解する機会を広げたとも言えます。
家族間の相続問題においても、18歳以上の若者がより積極的に参加できるようになったため、遺産分割協議などのプロセスもよりスムーズに進行するでしょう。
全体的に見て、成人年齢の引き下げは、相続手続きの透明性を高め、若者の社会参加を促進する効果が期待されています。
本記事では、2022年4月1日から適用された民法の改正により、成人年齢が20歳から18歳に引き下げられたことに伴う、相続税と贈与税の変更ポイントについて解説してきました。
この法改正は、若者が社会でより早くから責任ある役割を果たせるようにすることを目的としていますが、その影響は税制にも及びます。
改正により、18歳以上の若者に適用される新しい税率や条件が設けられましたので、贈与や相続を考えている方は、新しい規定をしっかりと理解しておきましょう。
特に、未成年者控除や遺産分割協議の変更は、直接的に税負担や法的権利に影響を与えるため、計画を立てる際には専門家のアドバイスを求めることをお勧めします。
成人年齢引き下げに伴う相続・贈与については個々の状況により異なりますので、確実な計画を立てるなら、法律の専門家にご相談ください。
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