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株の相続に必要な手続きとは?株の評価方法から相続の注意点までを解説

株の相続に必要な手続きとは?株の評価方法から相続の注意点までを解説

株の相続に必要な手続きとは?
株の評価方法から相続の注意点までを解説

こんにちは。【札幌相続遺言プラザ】ふくちたつや司法書士・行政書士事務所の福池達也です。

株を相続するにあたって、手順がわからない、株の評価方法が知りたい、という方は多いのではないでしょうか。株は遺産分割ができるため、場合によっては遺産分割協議などを経て相続することになります。


この記事では、株を相続する流れから、評価方法、かかる税金やその節税方法、注意点まで解説します。相続の予定がある人の参考になれば幸いです。

株を相続する流れ

株の相続は、銀行預金や不動産の相続とは異なる手続きを行い、相続します。ここでは、株を相続する際の流れについて解説します。

遺言書を確認し、相続人と相続財産の調査

親族が亡くなり相続が発生する場合、まず被相続人が遺言書を残していないかの確認と、財産調査を行う必要があります。株の場合でも「どれほどの株が相続できるのか」を調査します。なお、株には上場株式と非上場株式の2種類があり、それぞれで調査方法が違うため確認しましょう。

上場株式の調査方法

相続財産に上場株式がある場合、証券会社や信託銀行から取引残高報告書が送付されているはずです。取引残高報告書は、株取引があれば3ヶ月に一度、取引がなければ1年に一度送付されます。

口座開設している証券会社がわかれば、次に相続が発生したときの株価を確認するために、取引残高証明書の発行を依頼しましょう。取引残高証明書には、株式の銘柄、数量、時価が記載されています。遺産分割協議を行う際には、この証明書を保存しておきましょう。

非上場株式の調査方法

非上場株式は基本的に、書類や記録から発行会社や取扱会社を調べ、問い合わせをする以外に調査方法はありません。

株券、株主総会招集通知や配当金の支払い通知、確定申告書の控えなどから、株の有無を明らかにできます。

株券や郵便物を確認できれば、株の発行会社がわかります。発行会社に取引残高証明書の発行を依頼しましょう。

相続か放棄かの判断

株の調査を行ったあと、遺産を相続するか、放棄するかを決めておきましょう。もし、遺産の負債が資産を上回っている場合は、相続放棄も視野に入れます。

相続放棄ができるのは、相続開始から3ヶ月以内です。それまでに書類をそろえ、裁判所への提出までを済ませなくてはなりません。一度遺産放棄をすると撤回できないため、慎重に判断したい面はありますが、早めの決断が求められます。

準確定申告

被相続人に収入があった場合、相続人は被相続人に代わり準確定申告をします。この収入には株の配当金も含まれます。準確定申告の期日は、相続の開始を知った日の翌日から4ヶ月以内です。

遺産分割協議

相続人が複数いて遺言がない場合、遺産分割協議で財産の分け方を決めます。株についても、相続人全員で話し合い、誰がどの程度の株を相続するかを決めましょう。遺産分割協議中は、株は相続人全員の共有となります。そのため、この間に株の譲渡や処分はできません。

株の分け方を決めたら、遺産分割協議書を作成し、全員で押印します。押印は実印で行うようにしましょう。また、遺産分割協議書には、印鑑証明書の添付が必要です。

相続人全員で協議がまとまらない場合は、家庭裁判所に遺産分割調停を申し立てます。調停でもまとまらない場合は、審判に移行し、裁判所が株の相続者を決めます。

株の名義変更

遺産分割協議が終わり、株の分割方法が確定したら、株の名義変更ができます。名義変更にあたり、相続人名義の証券口座が必要です。もし相続人が証券口座を持っていない場合、新規口座の開設も必須です。

上場株式の場合、証券会社ごとに名義変更の手続き用紙があり、必要書類も異なります。この際、先に作成しておいた遺産分割協議書と、相続人全員分の印鑑証明書の提出を求められます。非上場株式の場合は、発行会社に直接連絡し、名義を書き換えましょう。株主名簿に記載されたかどうかまで確認することが大切です。

相続税を申告し、納付

株の名義変更が完了後、相続税の申告・納付を行いましょう。なお相続税が発生するのは、遺産額が基礎控除額を上回った場合で、超えた部分が相続税の課税対象です。

基礎控除額は、「3,000万円 + (600万円 × 法定相続人の数)」となります。

相続税の申告期限は、相続開始日の翌日から10ヶ月です。納付期限も同様であり、原則、現金による一括納付です。相続財産の調査や、株式の名義変更などがあるため、早い段階から計画的に手続きを進めましょう。

株の評価方法

株は日によって価値が変わります。そのため、相続が発生した際の時価を確認しなければいけません。株の評価方法は、上場株式と非上場株式で異なります。

上場株式

上場株式は、以下のうち最も低い価格を選んで良いとされています。

  • 被相続人が亡くなった日の終値
  • 被相続人が亡くなった月の毎日の終値の平均額
  • 被相続人が亡くなった前月の毎日の終値の平均額
  • 被相続人が亡くなった前々月の毎日の終値の平均額

原則は被相続人が亡くなった日の終値となっていますが、相場が急変するなどで評価額が高騰、もしくは下落した際などを想定し、このような制度が取られています。

非上場株式

非上場株式は証券会社などが関与していないため、株価を自分で計算しなければなりません。評価方法には経営者用と少数株主用があり、計算方法が異なります。

いずれにしろ、税金に関する知識が必要となるため、税理士や会計士に相談するのが一般的です。

経営者用株の計算方法

非上場会社の経営者が亡くなった場合に、こちらの経営者用株の計算方法を使用します。本来は原則的評価方法と呼ばれ、会社の規模により以下の方式に分かれています。

・類似業種批准方式

業種が同じ、または似た上場企業の株価を基準とした評価方法です。

・純資産価額方式

会社を廃業し清算した場合の、株主1人あたりの分配金の値段を基準に株価を算出する評価方法です。

・併用方式

上記2つを合わせた評価方法です。さまざまな要素を考慮した判定となるので、通常は税理士や会計士に任せます。

少数株主用

経営に参画していない少数株主が亡くなった場合、こちらの計算方法を使用します。基本的に、配当還元方式という評価方法を使います。これは、その株を所有することにより受け取る1年分の配当金額を10%の利率で還元し、元本である株の価額を評価する方法です。

株の分割方法

株の分割方法

相続人が複数いる場合、株の遺産分割をする必要があります。ここでは株の分割方法について解説します。

現物分割

株を換金せずにそのまま相続する方法が現物分割です。例として、株すべてを1人の相続人が相続する場合も現物分割です。2つの銘柄の株を複数人で分けて相続する場合も、現物分割となります。

株は不動産とは違い、数で平等に分けることが可能です。そのため、現物分割が一般的です。

なお、株は相続後に価格変動する場合があります。さらに、株式を売却する場合は手数料が必要になるので、相続時よりも目減りする恐れがあることは留意しておきましょう。

代償分割

株を相続人のうち1人が相続し、ほかの相続人に代償金を支払う方法が代償分割です。例として、3人の相続人のうち1人が評価額3,000万円相当の株を相続し、残りの2人に1,000万円の現金を支払う場合、それぞれの相続による利益は1,000万円ずつとなります。

ただしこの場合は、遺産分割協議書に代償金を支払うことを記載しましょう。記載しない場合、代償金を贈与としてみなされる恐れがあるので、注意しなければなりません。

株式を相続する人にとっては、相続の利益が売却の際に手数料などで目減りする恐れがあります。代償金を支払ってもらう相続人にとっては、手数料を支払わないで済みます。このままでは不公平なため、ほかの相続で調整することも視野に入れましょう。

換価分割

株式を売却し、その代金を分割して相続する方法が換価分割です。売却代金を法定相続分に従い分配しても良いほか、遺産分割協議で別の分け方にしても問題ありません。相続人全員が投資に関心がない場合に最適な手法です。

手数料は引かれるものの、売却後の現金を分割するので価格変動の影響はなく、公平なのも利点となります。

証券会社の判明の有無による対処の違い

口座のある証券会社が判明しているかどうかにより、株の相続についての対応は変わります。どちらの場合でも、手続きにはさまざまな書類が必要なので、それぞれの対応方法について確認しておきましょう。

口座のある証券会社が判明している場合

口座のある証券会社が判明している場合は、まず証券会社に連絡し、名義人の死亡と株の名義変更を申し出ます。その後、必要な書類をそろえて手続きを行います。必要な書類は、証券会社によって異なるものの、一般的には以下のものが必要です。

  • 戸籍謄本
  • 住民票
  • 本人確認書類
  • 遺産分割協議書
  • 相続人全員分の印鑑証明書
  • 遺言書

手続きが終われば株主として登録され、通知や配当金の受け取りができます。

口座のある証券会社が不明な場合

口座のある証券会社が不明な場合は、証券保管振替機構に連絡を行い、どこの証券会社と取引があるのかの情報開示請求をします。その際、開示請求書の必要項目に記入し、必要書類と共に郵送しなければなりません。必要書類は以下のとおりです。

  • 開示請求書
  • 法定相続人の本人確認書類
  • 相続人の戸籍謄本
  • 被相続人の戸籍謄本
  • 被相続人の住所がわかる書類

株の相続にかかる税金および費用

株の相続にかかる税金および費用

株の相続には、ほかの相続財産と同じく税金や費用がかかります。ここでは、相続税や譲渡所得税、手数料に関して解説します。

相続税

原則として、相続発生日の終値が相続税評価額となります。この金額を元として、相続税を算出することとなります。なお、遺産分割協議の際の評価額は分割時の金額であり、相続税の評価額とは異なることには注意しましょう。

相続税の税率は、株を含めた相続する財産の金額により異なります。

法定相続分に応ずる取得金額

税率

控除額

1.000万円以下

10%

-

1.000万円超
 ~3,000万円以下

15%

50万円

3,000万円超
 
~5,000万円以下

20%

200万円

5,000万円超
 ~1億円以下

30%

700万円

1億円超~2億円以下

40%

1,700万円

2億円超~3億円以下

45%

2,700万円

3億円超~6億円以下

50%

4,200万円

6億円超

55%

7,200万円

例えば、遺産総額が3,500万円の場合で1人が相続する場合、相続税額は次のとおりです。

遺産総額 3,500万円 × 税率 20% - 控除額 200万円
  =  相続税額 500万円

譲渡所得税

株を売却した場合、売却益に対して譲渡所得税がかかります。譲渡所得税額は、売却代金から取得費と手数料を差し引いた譲渡益の20%(所得税15%、住民税5%)です。なお、令和19年までは復興特別所得税が2.1%加算されるため、譲渡所得税額は20.315%となります。

手数料

株の売買には、証券会社が手数料を徴収します。手数料は証券会社や取引のプラン、申し込み媒体などによって異なりますので、詳しくは各証券会社のホームページなどで確認してください。

株を相続する際の税金を節税する方法

株を相続する際の税金を節税する方法

ここでは、株を相続する際に発生する税金の負担を軽減する方法を解説します。生前贈与や、評価額を下げることなどで節税ができますので、詳しく見ていきましょう。

相続前に株式を贈与または売却する

上場株式は、相続が発生する前に生前贈与をすることで、株に対する相続税を減らすことが可能です。生前贈与には贈与税がかかるものの、年間110万円までは非課税となります。ゆえに、この額を超えないように年に少しずつ相続人へ株を贈与することで、相続税を節税できます。

なお、被相続人の亡くなる前から3年間の生前贈与については、相続税の課税対象になる点に注意しましょう。

非上場株式についても、会社の後継者へと生前贈与をすることにより、相続税を減額可能です。事業継承税制などを利用すれば、さらに軽減できるため、利用を検討してみましょう。

非上場株式の場合、評価額を下げる

非上場株式の評価額算出には、さまざまな計算方法があります。株主への配当を下げる、純資産を下げる、利益を下げるなどの方法により、評価額を下げることが可能です。

ただし、会社の資産放出や組み換えを伴うため、これにより被る損失が、節税できる相続税額を超えては意味がありません。そのため、対応には専門家である弁護士などへ相談することをおすすめします。

株を相続する際に注意すべき点

株を相続する際に注意すべき点

ここでは株を相続する際に注意すべき点について解説します。相続税の支払いや放棄を行うまでの期限や、未受領配当金について詳しく見ていきましょう。

相続税を支払う期限
 (被相続人の死後10ヶ月以内)

相続税の申告は、原則として被相続人が死亡したことを知った日の翌日から10ヶ月以内となります。

株を分割相続するのであれば、遺産分割協議に株式の名義変更などがあるため、10ヶ月は短く感じるでしょう。期限を守れないと、延滞税などが発生するため、相続手続きは余裕を持って行うことが重要です。

相続放棄を行う期限
 (相続開始を知ってから3ヵ月以内)

相続放棄をする相続人がいる場合、相続開始を知ってから3ヶ月以内に、相続放棄をすることを家庭裁判所に届け出る必要があります。3ヶ月を過ぎると、すべての財産を相続する単純承認に移行するため注意しましょう。

なお、書類を期限内に家庭裁判所に提出していれば問題ありません。例えば、期限間近で届出を行い、裁判所での処理中に3ヶ月を過ぎても、相続放棄は成立します。

未受領配当金

故人が生前に配当金を受け取っていない期間が合った場合には、株を相続した人が未受領の配当金を受け取れます。この期日は株を発行した会社により異なりますので、早めに確認しましょう。

まとめ

まとめ

この記事では、相続の流れから注意点までを解説しました。手続きには複数の書類を用意したり、遺産分割協議を行ったりなど、一朝一夕にはいきません。相続人同士でのトラブルを防ぐためにも、正しい知識が必要です。

また株の相続手続きは、親族がいれば自力で行うものではなくなるため、相続人全員が相続の流れを把握しておく必要があります。そのために、ほかの相続人と知識を共有し、相続に備えましょう。

相続手続きは自分でもできます。ですが…

相続手続きは非常に複雑で時間がかかる手続きです。また仕事や家事で忙しい合間に手続きをするのはとても労力がいることです。

  • 自分で手続きしようとしたが挫折した…
  • 予期せぬ相続人が現れた…
  • 相続人の一人が認知症で困っている
  • 故人の財産を全部把握できない

など「どうしたらいいか分からない」という事態に陥りやすいのが相続手続きです。

率直に言わせていただくと、これらは初めてやる方にはとても大変な作業です。

時間も手間もかかります。相続人が知らない預貯金や不動産を調査しなければ数年後に困った事態が発生することが多くあります。

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この記事を書いた人

司法書士・行政書士
福池達也

司法書士試験に合格後、司法書士法人にて研鑽。
家族の相続時、金銭により人間関係が悪くなる辛さを身をもって経験し、よりご相談者に寄り添った仕事をするために独立。相続手続をまるごとお任せいただけるサービスを行っている。

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