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こんにちは。【札幌相続遺言プラザ】ふくちたつや司法書士・行政書士事務所の福池達也です。
遺産相続には「遺留分」という最低限の取り分が法律に定められています。これには強い法的執行力があり、たとえ遺言書に明記されている相続指示でも無効にできません。そして、遺留分を知らずに何も相続できなかった時でも、後から取り返す方法があります。ここでは後から遺産相続の取り分を請求する「遺留分減殺請求」について解説します。
遺留分とは、法定相続人が遺産を取得する最低限の割合です。これは法律で定められており、遺言でも無効にできません。遺言や分割協議により不公平な割合で相続が行われ、遺留分に満たない取得分だった者は、ほかの相続人へ対し遺留分減殺請求をする権利があります。
遺留分相続の対象者は以下の3者のみです。
上記に該当しても、相続権の剥奪や相続放棄をしていると遺留分はありません。また、兄弟姉妹は法定相続人ですが遺留分相続権を持ちません。
法定相続とは、民法900条に定められている、遺言がない場合に遺産を分割する割合基準です。法定相続人は被相続人(故人)の配偶者・子・親・兄弟姉妹が対象となり、財産の全額に対して相続人の続柄に応じた割合で遺産を相続します。遺留分は多くの場合で法定相続分の半分を人数で分割して決めます。
法定相続人 | 法定相続分 | 遺留分 | |
---|---|---|---|
配偶者のみ | 遺産全て | 遺産の半分 | |
子のみ | 遺産全て÷人数 | 遺産の半分÷人数 | |
直系尊属のみ | 遺産全て÷人数 | 遺産の1/3÷人数 | |
配偶者と子 | 配偶者 | 遺産の半分 | 遺産の1/4 |
子 | 遺産の半分÷人数 | 遺産の1/4÷人数 | |
配偶者と 直系尊属 | 配偶者 | 遺産の2/3 | 遺産の1/3 |
直系尊属 | 遺産の1/3÷人数 | 遺産の1/6÷人数 | |
配偶者と 兄弟姉妹 | 配偶者 | 遺産の3/4 | 遺産の半分 |
兄弟姉妹 | 遺産の1/4÷人数 | なし | |
兄弟姉妹のみ | 遺産全て÷人数 | なし |
遺留分減殺請求には、遺留分侵害を知った日から1年間の期限があります。1年以内に遺留分減殺請求をしないと請求の権利が時効で消えます。しかし、期限内に1回でも請求すれば請求権は消失しません。
また、相続してから10以上経過していた場合も請求権が消えます。そのため、10年後以降に初めて遺留分侵害を知った場合にはすでに請求権がありません。10年以内に請求訴訟を起こしたものの、結審前に10年経過してしまった場合も請求権を失います。
2019年7月1日の民法改正によって、「遺留分減殺請求」は「遺留分侵害額請求」の呼称に改められました。同時に請求対象も変更されています。
現在の「遺留分侵害額請求」では遺産相続に不公平があった場合、遺留分を侵害されたとして相当額の金銭を請求する権利となりました。2019年6月30日までに行われた遺産相続では、それまでの「遺産減殺請求」が適用され、不動産の所有権なども請求できます。
相続人間で不公平な相続により、何も受け取れなかった者や取得分が著しく少なかった者は、ほかの多く受け取った相続人へ遺留分の減殺請求が可能です。減殺は多く相続した者の遺留分を超えた範囲に対して請求します。
例:故人の遺言により遺産を不公平に相続した3人兄弟
3,000万円の遺産を3人で相続するのに遺言の指示割合が不公平だった場合です。
長男:2,000万円
次男:1,000万円
三男:何もなし
三男が遺留分減殺請求を行った場合、まず対象となるほかの兄弟が得た遺留分を超える分を計算します。この例での遺留分は3,000万円の半分を人数で割ります。
遺留分:3,000万円÷2(法定相続分の半分)÷3(人数)=500万円
長男:2,000-500=1,500万円の超過
次男:1,000-500=500万円の超過
総額2,000万円の超過分へ贈与割合に応じて遺留分を請求すると、以下の内訳になります。
長男への請求:500×1,500÷2,000=375万円
次男への請求:500×500÷2,000=125万円
遺言書の中には、法定相続人以外の人物へ全財産を相続させる意向を記載したものがあります。この場合でも兄弟姉妹以外の法定相続人は、遺留分の請求が可能です。
例:故人の遺言で全額を友人へ譲り、実子には相続させない
故人が生前にお世話になった友人へ遺産3,000万円の全額を譲りたいと遺書に残し、一方で法定相続人の実子3人へは相続を許しませんでした。
友人:3,000万円
実子3人:何もなし
しかし、この場合でも3人の実子が遺留分500万円をそれぞれ請求できます。遺産を相続した友人は1,500万円を支払わなくてはいけません。
相続人が複数おり、その内で特定の1人が生前贈与を受け取っていた場合、それらを含めると不公平な相続になることがあります。
例:兄弟の一方が多額の生前贈与を受けていた
親が亡くなり、遺産2,000万円を兄弟2人が1,000万円ずつ相続したけれど、兄は親から自宅購入費用に4,000万円相当の生前贈与を受けていました。この場合では相続の総額が変わります。
相続財産総額:2,000万円(遺産)+4,000万円(生前贈与)=6,000万円
兄:1,000万円+4,000万円=5,000万円
弟:1,000万円
遺留分:6,000÷2(法定相続分の半分)÷2(人数)=1,500万円
弟は差分の500万円を遺留分侵害として、兄への請求が可能です。
遺留分を計算するには、基礎となる財産額を確定しなくてはなりません。基礎財産の価格は対象になる遺産を以下のように算定します。
相続開始時の遺産+1年以内の生前贈与+10年以内の相続人への特別受益にあたる生前贈与-債務 |
相続開始時の財産
現金・有価証券、不動産、動産(自動車、美術品、貴金属)などが対象です。
1年以内の生前贈与
財産を残した故人の死亡から遡り、1年以内に贈与されたものは全額を遺留分計算時の相続財産に加算します。ただし、贈与者・受贈者が他の相続人の遺留分に差し支えると理解していながら、生前贈与をする場合は「悪意の贈与」となります。これはいつ行われたかを問わず相続財産の加算対象です。
10年以内の相続人への特別受益にあたる生前贈与
10年以内に行われた相続人への婚姻や自宅購入資金、企業の独立開業資金など生活の基礎となる財産の贈与は、相続財産に加算します。これらの合計から債務を引いた金額が基礎財産額です。
故人の遺産を相続するのが配偶者のみでは法定相続分は財産の全額です。遺留分はその1/2なので、財産の半分を受け取ります。
このケースでも遺留分は法定相続分の1/2なので、配偶者と子ども1人の取得分はそれぞれ1/4です。子どもが複数いる場合は、遺留分の1/4を人数で等分します。
相続人である子どもがすでに亡くなっている場合は代襲相続が発生し、孫が相続人になります。遺留分は子どもと同じ割合の1/4です。孫も亡くなっている場合ではひ孫が再代襲相続をします。
このケースでは配偶者の遺留分が遺産の1/3、被相続人の父母が1/6です。法定相続人が配偶者と直系尊属の場合は、ほかと分割比率が異なり、配偶者:2/3、直系尊属:1/3となるためです。
故人の父母や祖父母の直系尊属が相続人のケースでは、遺留分の1/3を人数で割り、父:1/6、母:1/6を取得します。片親の場合では1人で1/3を相続します。
法定相続人が、配偶者と兄弟姉妹しかいない場合は、遺留分として配偶者のみ1/2の取得が可能です。兄弟姉妹に遺留分は認められておらず発生しません。
遺留分を相続する権利を持つ者は、取得した遺産が遺留分に足りていない場合、多く相続した者へ対し遺留減殺請求が可能です。現在は、遺留分を侵害されたとして「遺留分侵害額請求」が行われます。
遺留分減殺請求には、まず相手へ請求の意思を伝えます。これは本人の意思表示だけで効力が発生します。しかし、口約束では後から言った・言わないの水掛け論などトラブルが起きやすいため、内容証明郵便での通知が一般的です。自分と郵便局に日付の入った控えが証拠になるほか、配達証明も付ければ送達時と相手へ届いた証明ができます。
また、請求相手が複数人いる場合は、それぞれの相続額に応じた請求額を振り分けて算定しなくてはいけません。
遺留分減殺請求を伝えた相手が請求に応じない、または話し合いで解決できない場合は、家庭裁判所へ調停の申し立てができます。ここでは調停委員を交えて話し合いを行います。
仮に調停でも双方の合意が得られずに終わった場合には、訴訟に必要な「調停不成立証明書」を取得しましょう。なお、調停には1,200円分の収入印紙が必要です。
遺留分減殺請求について調停が不成立だった場合は、訴訟で決めるしかありません。請求額が140万円以下なら簡易裁判所へ、140万円を超える訴訟ならば地方裁判所へ訴訟を提起します。判決で遺留分の侵害を認められたなら、請求相手へ支払い命令が出されます。
また、これらの裁判に代理人を依頼する場合、140万円以下の訴訟では弁護士以外に司法書士の委任も可能です。
遺留分減殺請求には「調停前置主義」という制度があり、事前に調停を経ていなければ裁判の提起ができません。そのため訴訟時には、調停不成立証明書の提出が必要です。
ほかにも遺留分減殺請求の関係資料や、裁判所の手続き費用以外に、弁護士に代理人を頼む場合は依頼費用が必要です。
必要書類は大きく分けて3種類あります。
申立書関係書類
申立書(遺産目録)と相続関係図の写しを提出分と請求相手の人数分
資料非開示の申出書(必要な場合のみ)
身分関係書類
被相続人の出生、または死亡時までの除籍謄本や改製原戸籍謄本類の全て
相続人全員の戸籍謄本
相続人内に死亡している者がいる場合は除籍謄本や改製原戸籍謄本
遺産目録に記載した遺産に関する資料
不動産の登記簿謄本、または登記事項証明書
遺言書写し、または遺言書の検認調書謄本の写し
これら書面の写しを請求相手の人数分
請求にかかる費用は裁判手続にかかる費用と、弁護士依頼料がそれぞれ必要です。
請求手続き費用
請求金額により収入印紙代が異なります。
請求金額 | 収入印紙代 |
---|---|
100万円まで | 請求額10万円ごとに1,000円増 |
500万円まで | 請求額20万円ごとに1,000円増 |
1,000万円まで | 請求額50万円ごとに2,000円増 |
1億円まで | 請求額100万円ごとに3,000円増 |
ほかに資料の郵送費用として5,000~10,000円ほどかかる場合があります。
弁護士依頼費用
遺留分減殺請求について、どの段階を依頼するかで費用が異なり、難しい業務ほど高額です。初回の相談料は無料のところもあります。
依頼内容 | 費用の目安 |
---|---|
相談料 | 30分5,000円 |
遺留分減殺請求意思表示代理費用 | 1~3万円 |
遺留分減殺請求意思表示代理費用(弁護士名表記) | 3~5万円 |
着手金 | 30~40万円 |
遺留分減殺請求の交渉 | 10~30万円 |
遺留分減殺請求の調停 | 30万円 |
遺留分減殺請求の訴訟 | 40万円 |
報酬金 | 取得できた遺留分の4~16% |
相続手続きは非常に複雑で時間がかかる手続きです。また仕事や家事で忙しい合間に手続きをするのはとても労力がいることです。
など「どうしたらいいか分からない」という事態に陥りやすいのが相続手続きです。
率直に言わせていただくと、これらは初めてやる方にはとても大変な作業です。
時間も手間もかかります。相続人が知らない預貯金や不動産を調査しなければ数年後に困った事態が発生することが多くあります。
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名称 | 札幌相続遺言プラザ 運営:ふくちたつや司法書士・行政書士事務所 |
---|---|
代表者 | 司法書士・行政書士 福池 達也(ふくち たつや) |
住所 | 〒060-0003 北海道札幌市中央区北三条西七丁目1-1SAKURA-N3 |
電話番号 | 011-206-4217 |
FAX番号 | 011-351-5809 |
受付時間 | 9:00~18:00 |
定休日 | 土曜・日曜・祝日 |
主なサービス | 相続、生前対策(遺言、成年後見、信託)、離婚、会社設立 |
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